先日の勉強会でのこと
症例検討の中に「小腹不仁」という言葉が出ていました。
この意味は、下腹部の真ん中の腹壁の緊張が低下している状態とされています
(勉強会の時点では、おさえて凹む程度の認識でした。)
腹診なんて薬剤師はできないから、あまり興味が無かったのも事実です・・・(^.^;。
これは腹証奇覧とうい本の挿絵です。
よく小腹不仁という解説で引用されていると思います。
日本漢方では、この言葉を八味丸などを使う根拠にすることが多いです。
さらには、腹診をしている医療側が臍の下の辺りをおさえて、力がなく凹みやすいという状態を小腹不仁と表現しています。
ですから、他覚所見になるのです。
でも、中国人の先生の見解は・・・
不仁とは、他人の心を無視するという状態。すなわち、自分の感覚が鈍くなっている状態。
小腹不仁は、自覚症状ではないかと考えを述べられました。
日本では、他覚所見としての小腹不仁がメインになっていて、中国では自覚症状としての小腹不仁がメインになっているんですね~
辞書で調べてみると、両方の意味が書かれていました。
どちらが正しいというのではなく、いろいろと考え方や解釈があるんだなぁと思った次第です。
中国ではというか、先生は儒教の影響を強く受けておられて、仁という言葉に深い認識がある。
ボクなんかは、小腹不仁という単語でしか認識が無いので、この辺りが考え方の違いになると思います。
しかし、これが日本と中国の違いと言ってしまってはいけない。
いまの小腹不仁についての概念が、あまりに小さな意味だけになってしまっていることを理解しないと・・・
たぶん、今の漢方(教科書的、メーカー的)って、狭い見方や狭い使い方になっているんでしょうね~
【参考までに】
漢方用語大事典
臍下不仁(さいかふじん)
臍下:へその下の部分
~不仁:臍下に弾力が無く、脱力して凹んでいる状態をいう。この腹証は腎虚をあらわす。小腹不仁。
漢方医語辞典 西山英雄先生
小腹不仁
① 下腹部の知覚鈍麻または麻痺のこと
② 下腹部に力がなく空虚な状態。下焦の虚していることであり、八味丸の証で産後や開腹手術後の尿閉を起こしているような場合にみられる
不仁
中国医学大事典
① 人を愛する心の無いこと
② 知覚の麻痺を意味する
③ 陽明の脈の経気が尽きるときの状態
漢方医語辞典 西山英雄先生
① 知覚麻痺
② 肌膚のしびれ
③ 知覚鈍麻
④ 身に痛痒を覚えざるを不仁という
⑤ 麻木におなじ