おせち料理に黒豆は入っていましたよね。黒豆は黒大豆とも呼ばれ、大豆の種類です。岡山県は黒豆の産地で、作州黒という品種が有名です。おせち料理だけで無く、豆餅と言ってうるち米ともち米を混ぜたお餅に黒豆を混ぜて、黒豆をつぶさない程度についたものを正月に食べます。ちょっと塩味がして、美味しいです。
見えにくいですが、これが豆餅を入れた我が家のお雑煮です。
具はシンプルで、アナゴとほうれん草、それに最近は愛媛の錦巻がのってます。
さて、この黒豆ですが、日本に住む者には冬にもってこいの食材です。黒豆を甘草と煮た汁は、食中毒や二日酔いなどの酒の中毒に効果があります。黒豆の煮汁に氷砂糖を加えると、カゼや咳などによる声がれに効きます。おせち料理の黒豆も二日酔いや喉に良いと思います。
また、漢方的に黒豆や昆布などの黒い食材は、腎の働きを助けると考えられています。腎の働きは、体内の水分をコントロールするという西洋医学的な腎臓の働きだけではありません。腎は人間の生命活動のエネルギーである「精(せい)」を貯蔵して、全身に精力を与えて粘り強さや根気を生み出します。成長や生殖にも深く関わっているのです。腎は人体の生命活動を維持するエネルギーを蓄え、全身にこれを供給し、五臓六腑の健全な働きを維持する役目を担っています。ある程度年齢を重ねてくると、耳がきこえにくくなる、腰や膝などの痛み、骨粗鬆症、歯が悪くなる、物忘れなどの症状が現れてきますが、漢方的には全て腎の衰えと考えます。
日本は海に囲まれて湿気が多く、食べ物もお米を水で炊いたご飯を主食にして、味噌汁、野菜などの煮物など、水分を多く摂る食生活を送っています。(いました?)島国の日本は、大陸に比べて、空気も湿っていて、体に取り込んだ水分を呼吸や皮膚から蒸発させる割合が低いので、その多くを尿や大便から排泄する必要があります。そのため、水分を排泄する役割のある腎や膀胱に負担がかかりやすくなります。特に冬は夏に比べて汗もかかず、一段と体に水が溜まりやすく、腎や膀胱の負担が増えます。
このような環境で暮らしているので、冬は腎を助ける働きのある食材を摂ることは大切なのです。栗きんとんの栗も腎を補う食材です。昆布巻きの昆布も腎を補います。田作りのジャコもそうです。たたきゴボウのゴボウもそうです。こう見てみると、おせち料理には冬に補わなければならない腎を補う食材が多く使用されていることが分かります。これも、先人の知恵ですね。
[中医学的な効果]
①めまいやむくみ、腹水を解消する
②血流を良くする
③陰と血を補い、潤いを与える
④眼をきれいにする(みえやすくする)
四性:平・甘
帰経:肝・脾・腎
参考:民間薬の実際知識 村上光太郎
旬を食べる和食膳のすすめ 武鈴子
ナチュラル薬膳 小野槇玲